佐藤勝利くんが主演を務めた舞台『モンスター・コールズ』を観劇しました。
観劇前に原作小説『怪物はささやく』を拝読しましたので、まずはそちらの感想をば。
読み始めて感じたのは、挿し絵の入り方が普段読む日本文学のそれとは違っていること。挿し絵も文章と地続きのように感じられました。
印象に残った場面を挙げるとするなら、やはりコナーが第4の物語を遂には口にしてしまうところからラストになります。
朝の通勤電車の中で読んでいたのですが、胸を締め付けられ、思わず鼻を啜りました。
それから、この少年コナーを勝利くんが演じるのだと考えたら、胸がぺしゃんこになりそうでした。
物語を通して改めて考えさせられたのは「人の気持ちや思い、その人というものは簡単に白黒つけられるものではない」ということです。
「どれほどの悪人にもきっと良いところはある」と考えることは、まだ簡単な気がします。
でも、そうではなくて、「あんな事をするっていうことは、あの人は私とは敵対するような相反する考えを持っている」とすぐに見限る癖を、私は改められないのです。
自身の心中すら、ごちゃ混ぜなはずなのに。矛盾するものも、自分にとっては真実であるはずなのに。
舞台は、3月2日の昼公演を観劇しました。
悩んだ末、防振は持って行きませんでした。この作品は物語全体を味わいたいと思ったためです。
PARCO劇場での観劇は初めてでしたが、その会場の狭さに驚きでした。一番下手側の列でしたが、見切れはありませんでした。
小道具にはシリアルやお洋服など、セットとしてはロープや椅子という限られたものを最大限に活用していました。
コナーの制服姿、とってもかわいくて大好きです。時折ママに反抗的な物言いをする感じも愛おしくてたまらない。
ストーリー展開は原作通り。母親、いじめっ子のクラスメイト、教師が小説とは違ったキャラクターに感じられました。
舞台として印象的だったのは、コナーが見た悪夢を表現する場面で、回を重ねるごとに徐々に「絶対に離さないで」「離さないよ」という声が聞き取れるようになっていったこと。
そして胸を打つのはやっぱりラストシーン。病院のベッドの上で、ぎゅっと母親を抱きしめながらうずくまった小さな少年の背中が忘れられない。
一幕の途中から涙を必死に堪えていましたが、ラストでは耐えきれませんでした。
涙で視界はぼやけていましたが、カーテンコールの様子はとてもかわいかったです。
ストーリーからして、「楽しかった」という感想に着地するのにはいささか違和感を覚えますが、見応えのある舞台でした。